2026年2月19日
「採用」の前に「体験」の機会をつくる。佐渡の建設会社が始めた「採用」の工夫とは。
有限会社麻布組
建設業
体験就業
短時間勤務
(左から、総務人事部 松宮様、工場長 鷲尾様)
有限会社麻布組は、新潟県佐渡市に拠点を置き、土木構造物の設計・施工・管理を手がける建設会社です。地域のさまざまな案件に携わり、島の暮らしを支える基盤づくりを担っています。建設業は応募が集まりにくく、同社でも「求人を出しても人が来ない」という状況がありました。

今回は、そうした状況の中でマッチボックスを活用し、「採用」より先に、まずは仕事を「体験」してもらう。そんな“出会いのきっかけ”づくりに取り組まれている麻布組の山口様に、導入の背景や具体的な運用方法(短時間枠の設計、業務の切り出し、リピーターが生まれる仕組みづくり)、現場で起きた変化についてお話を伺いました。
採用以前に、出会いの機会がなかった
求人を出しても、人が来ない。——それは単に「条件が合わない」という話ではなく、もっと手前で、「出会いの機会」そのものが不足していたからでした。

麻布組様でも、「求人を出しても応募が本当にない」時期が続いていたといいます。採用の打ち手を探す以前に、そもそも知ってもらう機会が生まれない。現場には、そんな前提が積み上がっていました。

象徴的だったのが、企業説明会です。建設業の仕事はイメージが伝わりづらい面もあり、ブースに足を運んでもらうのは容易ではありません。中には「ブースに来てくれた人はゼロ」という年もあり、自社の取り組みや魅力を十分に伝えられないこともありました。

応募が来ないのは、能力や意欲の問題だけではありません。
入口がないから、出会いようがない。採用以前に「触れてもらう」機会がない。それが、採用にかかる大きな課題でした。
導入の決め手と成功の鍵
そこで同社が選んだのは、「採用」より先に、まず「体験の場」をつくることでした。
いきなり雇用を結ぶのではなく、気軽に現場を覗いてもらい、仕事に触れてもらう。接点の順番を、まずはそこから始める形に変えました。

この考え方を支える手段として、マッチボックスを活用しました。

そして山口様は、その意義を次のように話します。
「入り口としてマッチボックスさんがあるっていうのは…すごい大事なことかなって思います」
建設業に“触れてもらう機会”を形にする上で、同社が意識したのは大きく3つでした。

1)まず「見える化」する:現場を見せ、仕事を見せる
最初に来たのは、帰省中の大学生でした。
ただ、受け入れ初回は会社側も「何をしてもらうか」を固め切れていなかったといいます。だからこそ、その日は“採用選考”のように構えず、まずは仕事の輪郭を見せる一日にしました。

当時やっていた仕事の話をし、これまでの現場を見に行く時間をつくる。さらに、その学生が学んでいた分野と接続できそうだと考え、CAD(※)にも触れてもらいました。
現場の空気と、仕事の手触りを短時間で感じてもらう。これが体験受け入れの原型になりました。
※パソコン上で建物の設計図や施工図を描くソフトウェア

2)「体験の手触り」を残す:やったことを本人に返す
CAD体験は、「見て終わり」ではありません。
会社側が寸法や角度などの条件を指定し、「これを描いてみて」と課題の形にして渡します。学生は楽しそうに図面を描き、成果物がその場に残りました。

さらに終業後、その成果物をPDFにして本人へ送付。体験が“思い出”で終わらず、「自分がやったこと」として手元に残る状態まで整えています。山口様は「ちょっと喜んでくれてたかな」と振り返っていました。

3)時間を短く切る:入りやすい枠を増やす
「フルタイムで働ける人」を前提にすると、入口は狭くなります。
同社は、事務系の求人で「8時〜17時」を当たり前にせず、「9時〜15時」のように短く切ることで、応募が増える実感があったといいます。

やったことのない仕事を、いきなり長時間やるのは心理的に重い。
短い枠なら“試してみよう”が起きやすい。山口様は「頭を柔らかくしてやれば、結構人が来るんだな」と、運用の中で前提が変わっていったと話しています。
応募者の幅が広がり、「続いていく関係」が育った
入口を「体験」に寄せたことで、応募してくれる人の幅が広がりました。年齢層は、大学生から60代まで。
「来てくれてる人たちはみんな頑張ってくれていて…印象はとても良かったです」

現場で起きていたのは、「誰でもできる仕事を探す」ではなく、“異業種から応募してきた人でも任せられるサイズに仕事を切り出す”という発想への切り替えでした。
難しい作業を丸ごと渡さず、資格を要しない範囲の“シンプルな作業”を切り出して任せることで、実際に異業種の人でも作業を進められたといいます。

さらに、単発で終わらずリピーターも生まれました。

半年ほど運用した中で、「3〜4人は何回か来てくれた」とのこと。

一度触れてもらえれば、働き手も「合う・合わない」を判断しやすい。
同時に、合う人とは「続いていく関係」が育ちやすい。入口を“体験”にしたことの効き目が、現場の手応えとして蓄積されていきました。
マッチボックスを通じて働く方が、舗装修繕の作業の一部を担当している様子
マッチボックスを通じて働く方が、水路づくりの作業の一部を担当している様子
「誰が来ても回る」土台づくりへ広がった
この取り組みは、採用だけの話に留まりませんでした。
“入口を広げる”と同時に、“入ってきた人が迷わず動ける”状態を整える必要が出てきたからです。

同社が進めたのは、「誰が来ても回る」仕組みづくりでした。
事務で応募してくれた人に、現場向けのマニュアルづくりを依頼。初めて出勤する人向けのマニュアルも、同じく外から来た人の視点で整えていきました。

山口様は、マニュアル化の狙いをこう説明しています。

「現場に来てくれる人にも渡したいし…誰が来てもすぐに仕事ができるような状況を作りたかった」

背景には、緊急時の対応を一秒でも早めたい、というリスク管理の意識もありました。記憶は曖昧で、人によって解釈も変わる。だからこそ、誰が来ても同じ動きができるように「土台」をつくる。

外から来た人に作ってもらうのは、現場の常識を疑えるからでもあります。「知らない人に理解してもらうためには、知らない人に作ってもらった方がいい」。そんな言葉が出るほど、受け入れを仕組みに寄せていきました。

いきなり採用に踏み切らない。代わりに、まずは体験の機会をつくる。
そして、来てくれた人が“迷わず動ける”状態まで整える。
この二つがセットになることで、短時間のスポット受け入れでも現場が回るようになっていきました。
あなたの現場でも、「続いていく関係」を育てませんか?
「スポット=単発の穴埋め」で終わらせない。
麻布組様は、採用より先に「体験」という入口を設計し、短時間でも触れやすい枠をつくることで、受け入れの幅を広げていきました。
さらに、任せる仕事を“未経験者でもできる内容”に切り出し、誰が来ても迷わず動けるようにマニュアルを整備。短時間の受け入れが、現場で回る仕組みとして蓄積されていきました。

導入ありきではなく、まずは「無理なく回る受け入れ設計」を一緒に整理しませんか?

・任せる仕事を、未経験者でもできる「作業」までどう切り出すか
・何時間・どの時間帯にすると、応募のハードルを下げられるか

弊社の担当者が、貴社の現場フローをお伺いし、「再現性のある型」をご提案します。
取材協力
有限会社麻布組
〒952-3421
新潟県佐渡市吾潟1843-2